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| Chucho Navarro_ⅶ P_21 ブラジルでのロス・パンチョスの人気は大変なものだったという。もちろんブラジルにトリオがなかったわけではない。例えばあの「カミネモス（カミニェモス）」の作者であるエリベルト・マルチンスのトリオ・ヂ・オウロは30年代末から活動している名門だ（洗練されたトリオ・イラキタゥンの誕生はロス・パンチョスが訪問する前年、つまり51年）。けれどもロス・パンチョスのサウンドがどんなに新鮮にうつつたかは想像にかたくない。 人気の中心はトップのモレーノのだった。ミーハー感覚で言えば、なんと言ってもトップなのである。エル・グエロのように華やかなプレイを見せて聴かせればさておき「サード・ヴォイスの人ステキ」などとおっしゃるギャルはいない。モレーノという名までしらなくても、ロス・パンチョスは彼らのトリオという印象はブラジルでかなりの間続いたそうだ。ひところの日本でのアルビーノのように。 ロス・パンチョスは映画にも出演した。題して「カルナバル・エン・リオ」。モレーノ期唯一の主演映画となったこの作品は歌と踊りでつづるリオのPR的なショウ映画（テレビが普及する以前に「世界の夜」だとか「ヨーロッパの夜」だとかこのテの映画が当たった）ではないかと思うのだが、この映画の中で彼らは①によれば「クリスト・デ・リオ（リオのキリスト）」を、③によれば、ほかの曲（後述）を歌った。 映画に使われたかどうかはさておき、「リオのキリスト」はチューチョの作品、そしてロス・パンチョスが歌ったおそらく唯一のサンバである。のちに彼らは「ロス・パンチョス・エン・ブラジル」と題したLPを出しているが、サンバでは歌っていない。リオ市コルコヴァード丘に立つキリスト像によせたブラジル賛歌みたいなこの曲はレコード録音もされて、当時人気があったという。人気曲には、誰もが聴きたがるのと、自分も口ずさみたくなるのとの二種類があるが、メヒコの守護聖母グアダルーペの処女まで登場する、つまりメヒカーノの感情・感覚でつづられたこのサンバは前者だろう。アルビーノ期にも二回録音しているがそのひとつはブラジルでなされた。モレーノ期の「リオのキリスト」を私は聴いたことがないのだが②に著者は“個人的見解だが”と断ってアルビーノ期に軍配をあげている。 さてこの時のリオ録音は我々日本のパンチョス・ファンには大文字で書かれるべきものだ。すなわちベサメ・ムーチョ / アモール / ソラメンテ・ウナ・ベス / キエレメ・ムーチョ / アケージョス・オホス・ベルデス / ペルフィディア / テ・キエロ・ディヒステ / マリア・エレーナ、これらのお世話にならなかった日本のパンチェスタは一人もあるまい。②にも“シャウ・モレーノ期のロス・パンチョスは日本市場を開いた。これは特筆されるべき”とある。 これらの曲目はアメリカ・コロンビアの依頼であったのが明白である。コロンビアはヒスパニックだけでなくアングロサクソン・アメリカンにもパンチョス市場を設けたかったのである。それにはよく知られたいわゆるラテン・スタンダードを。そしてロス・パンチョスの巡業先で立派な録音設備のある所といえばブエノス・アイレスかリオ、結局リオにおちついた、ということだろう。ブラジルのほうがラテン・スタンダードとやらに乗り気だったのかも知れない。 こうしておなじみ曲がずらりと並ぶ。「ドゥエルメ」や「フレネシ」もそうだろう前者は「タイム・ウオズ」の名で知られていたし、後者はアーティ・ショウ楽団のヒット・ナンバーだ。「ペルフィディア」もトミー・ドーシー楽団が当てた。このようなラテン・ベストをトリオ・ロス・パンチョスのボーカルでどうぞ、これこそ究極のオリジナル！ ボレロが並ぶ中で「マリア・エレナ」だけがバルス（ワルツ）なのは場違いではないか。どうもこれ一曲だけはブラジル側が強引に押しこんだように思える。ロレンソ・バルセラータ作のこの美しいバルスは、41年ごろアルナルド・アマラルという歌手が歌ってヒットさせて以来ブラジルではメヒコの |
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| Mira Caridado no sé qué hacer sin tu querer mi vida. No duérmo pensando en las noches la aucencia de mi alma que ya・ se me fue, te busco en mi sueño de antaño es casi ya un año y no quieres volver. Las noches que juntos pasamos con unos unieron nuestro carazón, si anido por siempre los besos que tú me brindabas con loca pasión Me siento perdido en el mundo y sin esperanza de volverte a ver, camino en la vida sin rumbo deseando con ansias de volver a querer. con ese cariño profundo como a ti te quiero ya a nadie querer, por eso no duermo en las noches míra Cridad,por si piensas volver. |
ねえ カリダー キミの愛がないとボクはどうすりャいいのか分からない。 来る夜も来る夜も想い続けてボクは眠らない とっくにどこかへ行ってしまったボクの心は不在 昨年のボクの夢の中にキミを探し求めている もう一年近くキミは戻ってくるそぶりなし。 ふたりいっしょに過ごした夜々は ボクたち互いの心をひとつに結び 激しい情熱でボクを祝福してくれた キミのくちづけをボクは永遠に宿しているんだ。 世の中から見捨てられたような気がするよ キミにまた会えるのぞみもないみたいだ、 あてどのない人生のたどり道を もう一度恋をしたいあせりとともに キミを愛するようにもう誰をも愛せない この深い愛情を友づれに だからボクは世々には眠らない だってカリダー キミが戻ってくる気になるかも知れないから。 |
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| カリダーという個人名を出しているのだから、モデルがいるのだろう、どんな女かなと聴き手に勝手な想像をさせておきながら当人たちはニヤニヤしている、そんな構図が浮かびあがる。よくも臆面もなく。けれどもこの頃のロス・パンチョスの行き方であるボレロ・マンボのような感覚なのでそんなにベタつかない。そしてしばしば指摘されるようにモレーノの声はナバーロのそれに似ているのだが、ソロの多いこの曲では一聴ナバーロが歌いまくっているかのような印象を与え、上記のような裏話を知るとくすぐったくなってくる。 ③によればロドリゲス期にも再吹込したそうな、そして同書本文ではナバーロ作、別項ではヒル作とされている。 もひとつカリダーがらみの録音を忘れてはならない。Ⅵ章をまるまるあてた「ロ・ドゥード」である。 |
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| Chucho Navarroⅷ P_25 リオではふたつの別離があった。 ひとつは、ロス・パンチョスとラス・ドリィである。リオでもてもてのロス・パンチョスにすれば最早彼女たちの助けは不要だったに違いない。52年5月に彼らは別れた。もともと独立したグループなのだから問題点は何ひとつなかったろう。 もひとつは二人のメヒコ人と一人のボリビア人の別れである。申すまでもなくロス・パンチョスにはアビレスとの時期につちかってきたフォームとヒット曲があった。けれどもモレーノの声質と音域ではそれは無理、そのことがエル・グエーロには．．． |
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